早い話が X86 やARM と MIPS といった ISA のプロセッサーと、コプロセッサーでも数の出ている NVIDIA やイマジネーションの GPU のような民生用途で自由に手に入るハードウェアじゃないと、ビジネスの現場では仕事にならないちゃうのかな?という話をしたい。または、FPGA や独自の ASIC を作る必要があると判断される場合は、ベンチャーを立ち上げる上では要注意ということも付け加えて説明していきたい。 君は「ALL THE WEB」「Inktomi」を知っているか? (中略) Googleは X86 を多用することで、 (中略) というわけで、X86 のような汎用のプロセッサで解決できない問題の場合は、ベンチャーのような「少数精鋭のインテリがブラックな労働で勝負する」という方法ができません。だから、グーグルは安心して TensorFlow のような特殊なプロセッサーを使わないとビジネスで勝負できない、そんな最先端技術を無料公開できるのです。 ただし、例外はあります。軍事や戦時の特殊事態の場合や、公務や金融業界や原子力といった宇宙線といったビットの反転がクリティカルになる領域では民生用途の品質では問題があります。前者では国家総動員体制になると市場経済が無視できるため価格の設定が不要となるからです。後者では、具体的にいうと RAS が必要となってきます。 RAS とは何か? (中略) 日本の場合は「富岳のようなプロセッサー」を作る能力があることをアメリカに示さないと、公務や金融といった特殊領域の渇望する RAS のついた Intel XEON Platinum や IBM Power といった CPU を常識的な価格でアメリカが売ってくれません。つまり、スパコンを作る能力が必要なのは、理系のためではなく文系のためなのです。そこんところを日本人の我々は知っておきましょう。 以上から「国際競争力のないスーパー・コンピューターを日本国民の血税で作る意義」と「スーパー・コンピューターをベンチャー企業が活用してサービスを提供することはない」ということは両立します。だから愛国心が極まって富岳のシステムを使ったビジネスをする必要はありませんし、インテルのプロセッサーで成功して「国産品を使わなくて恥じる」ということはしなくて良いのです。 おしまい。